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『エンダーのゲーム』

『エンダーのゲーム』 オースン・スコット・カード


 読書後の感想な訳ですが、この作品に関してはネタバレしたくありません。^^;
 特にこの作者の作品を読んだ事が無い人なら、先入観を持たずに読んで欲しいし、さらに言うなら、SFというジャンルに対する先入観さえ邪魔になるかも。
 後書きの中に紹介されている作者のこんな一言からも、この作品をSFというジャンルに限定する事にためらいを覚えます。
"ぼくのSFでのサイエンスは、作品にリアリティをあたえる程度の意味しかない"

 ネタバレせずに作品紹介する事は不可能なので、代わりに私のこんな所感を一言。
「想像は真実に迫る」

 この作品に書かれている事は全てフィクションですし、これからもおそらく起こらない。しかしこの作品中には、数多くの人々の葛藤や愛憎が見事に描かれてるし、おそらく真実と呼べる何かも描かれています。

 作品中のある一つの台詞だけご紹介しましょう。
「彼らは、月に、青くなれと命じることもできるさ、けど、それは起こらない」
 この一言は、本を通して読まなくても、一つの真実として理解できます。
 上の一言にはこんな台詞が続きます。(エンダーは主人公の名前です)
「いいか、エンダー、指揮官というのは、おまえが彼らに持たせておいてやるだけしか、権限を持たないんだ。おまえが彼らに従えば従うほど、それだけ多くの権力を、彼らはおまえにふるうのだ」

 いかがでしょう?SFなんてと思われてしまう事が惜しいくらい、この作品は、"一つの完成された作品"(A Master Piece)なのです。
 聖書を読んだ事が有る方なら、イエス・キリストがいかに多くの例え話を用いて教えを説いたか御存知でしょう。例え話とは、すなわち仮定されたお話、フィクションです。フィクションを通じてイエスは話を聞いた人々を真実へと導こうとした。フィクションを通じて、人々に考えさせる=想像させる事によって。(ただしこの作品は真実の探究が主題のお話では無いし、作者も私もキリスト教徒では無いので御安心を)

 
 今まで数百冊以上の本を読んできた私ですが、この本はその中でも至上の一冊です。本の題名も作者も内容も決して私は忘れないでしょう。

PS:世間一般からのお墨付きが欲しい方には、これがヒューゴー賞、ネピュラ賞を同時受賞し、その続編もまた両賞を再び勝ち取っているという事だけ申し上げておきます。85年に発表された作品ですが、今読んでも全く古さを感じさせないどころか、今のIT社会にまさに適合するような記述さえあります。


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